水耕栽培で植物を育てていると、「pH」や「EC」といった言葉を耳にすることがあります。
これらは、植物が健康に育つために欠かせない、培養液の非常に重要な要素です。
pHとECの基本的な意味と、なぜそれが大切なのかを理解すれば、あなたの水耕栽培は格段にレベルアップします。
植物からのSOSを見逃さず、適切なケアをするためにも、この記事でpHとECの基礎知識から測定方法、調整のコツまでをしっかり学びましょう。
pHとは?
pHの基本:「酸性」「アルカリ性」の度合い
pH(ピーエイチ)とは、培養液の酸性度またはアルカリ性度を示す数値のことです。
pHが7.0より大きい → アルカリ性
pH 7.0 → 中性
pH 7.0未満 → 酸性
植物育成におけるpHの重要性
ではなぜpHが重要なのでしょうか?
それは、培養液中の栄養素の吸収されやすさが、pHの値によって大きく変わるからです。
pHが植物にとって最適な範囲から外れてしまうと、たとえ培養液に十分な栄養が入っていても、植物はそれを効率的に吸収できません。
その結果、栄養欠乏を引き起こし、生育不良や葉の変色(黄化など)、最悪の場合は枯れてしまうこともあります。
多くの野菜では、一般的に弱酸性(pH 5.5~6.5程度)が好ましいとされていますが、育てる植物によって最適なpHは異なります。
最適pHの例)
・葉物野菜(レタス、水菜、小松菜など): pH 6.0 ~ 6.5
・トマト、キュウリ、ナスなどの果菜類: pH 5.5 ~ 6.0
・イチゴ: pH 5.5 ~ 6.5
・ハーブ類(バジル、ミントなど): pH 6.0 ~ 7.0
・豆類(エダマメなど): pH 6.0 ~ 7.0
ECとは?
ECの基本:「電気伝導度」と栄養の濃さ
EC(イーシー)とは、「Electrical Conductivity」の略で、培養液中の「電気の通りやすさ」を示す数値です。
培養液の中に肥料などのミネラル(塩類)がたくさん溶けていると、電気が流れやすくなります。
つまり、EC値が高いほど、培養液の中に溶けている栄養素の濃度が高いことを示します。
植物育成におけるECの重要性
EC値が低すぎる場合
栄養素が不足している状態です。植物は必要な栄養を取り込めず、生育不良や葉の変色(薄い緑色になるなど)、収量低下に繋がります。
EC値が高すぎる場合
栄養素が過剰な状態です。
人間が塩分を取りすぎると喉が渇くように、EC値が高すぎると植物の根は培養液中の水分をうまく吸収できなくなり、「肥料焼け」を起こして枯れてしまうことがあります。
育てる植物の種類や、生育段階(発芽期、生長期、開花・結実期など)によって、最適なEC値の範囲は異なります。
例えば、発芽期は低めに、生長期には高めに設定するのが一般的です。
最適ECの例)
・葉物野菜(レタス、水菜、小松菜など): EC 1.2 ~ 1.8 mS/cm
・トマト、キュウリ、ナスなどの果菜類: EC 1.8 ~ 2.5 mS/cm (開花・結実期はさらに高くすることもあります)
・イチゴ: EC 1.0 ~ 1.6 mS/cm
・ハーブ類(バジル、ミントなど): EC 1.0 ~ 1.5 mS/cm
pHとECの測定方法
pHとECは、専用の測定器を使うことで簡単に測定することができます。
pH測定器
・pHメーター:電極を培養液に浸すだけで正確な数値が表示されます。デジタル式で、校正(キャリブレーション)が必要なタイプが多いです。
・pH試験紙:リトマス試験紙のように、培養液に浸すと色が変わる紙。手軽ですが、メーターより精度は劣ります。
・pH測定液:液体試薬を培養液に混ぜて、色の変化で判断します。試験紙よりは正確ですが、メーターには劣ります。
EC測定器
ECメーター:電極を培養液に浸すだけで数値が表示されます。pHメーターと同様に、デジタル式が主流です。

pHとECの調整方法
測定した値が、植物にとっての最適値から外れていた場合は、以下の方法で調整します。
pHの調整
・pHを下げる場合(酸性に傾ける)
硝酸やリン酸などを主成分とする液体を少量ずつ培養液に混ぜて、よくかき混ぜながら測定し、目標値に近づけます。
・pHを上げる場合(アルカリ性に傾ける)
水酸化カリウムなどを主成分とする液体を同様に少量ずつ混ぜて調整します。
ECの調整
・EC値を上げる場合
規定量の液体肥料を少量ずつ培養液に加えて、よく混ぜてから測定します。
・EC値を下げる場合(栄養を薄くする)
・水を足す
・培養液を交換する…大幅にEC値が高い場合は、一度培養液を全量捨てて、新しい培養液に入れ替えるのが確実です。
まとめ:pHとECをマスターして、水耕栽培の達人に!
pHとECは、水耕栽培で植物を健康に育てる上で、決して避けては通れない重要な要素です。
これらの数値を定期的に測定し、適切に管理することで、植物は必要な栄養を効率的に吸収できるようになり、生育不良やトラブルを未然に防ぐことができます。
最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れてしまえばルーティンの一部になります。
pHとECをマスターして、あなたの水耕栽培を成功させ、イキイキとした植物を育てていきましょう!
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